思えば遠くへ来たもんだ

思い立ったが吉日 インドで働くことになった日本語教師。
「日本語が教えられれば大丈夫」と言われて来た町は、英語も通じない。
果たして3年の契約を無事に全うできるのか???

晴天の霹靂

話は3週間ほど前に遡る。


基本的には何不自由なく生活しているけど、最近老いの一途を辿っているせいか、コンタクトもメガネも合わず、教科書を読み間違えることもしばしば。

腰痛もひどいし、謎の虫刺されの痕は消えないし、ちょっと日本でメンテナンスしたいと思い、主任に「7月のJLPTが終わったら、おヒマをいただきたい」と打診してみた。

すると、「7月は新入社員が入るからダメ」と。

去年の新人は7月半ば入社だったハズなので、「JLPTが終わってから、新人が入るまでには時間があるのでは?」と再度打診。

すると「新人の入社時期はわからない。詳しくは副社長(主任の旦那)にきいて」とな。

面倒くさいな。やっぱりこの会社ダメだなと思い、日本語教師の求人を見るとインドでももっと高待遇の会社がいくつかあった。→別にインドにはこだわりはないけど、せっかく苦労してPan cardとAhddal card、地場の銀行のdebit cardを作ったから…

我が社は退職の3カ月前に意思表示をすればいいので、今の教え子達のJLPTを見送って退職するなら、3月中に言わねば。

そこで退職覚悟で、副社長に直談判。

すると「来週Mysoreに行くので、その時休暇の話をしましょう」


ん⁈休暇申請なんだから、yes or noで答えればいいのに、この勿体ぶった返信は何?ひょっとしてクビ?それならそれで話は早い。

でもクビなら早々に伝えるよね?

とさまざまな疑問。

でも副社長がやってくるのを待つしかない。


先週副社長がやってきた。

支店長と共に夕食。

副社長が「センセイも、もう立派なインド人になりましたねえ」と、話を切り出した。

「実は支店長が7月からAhmadabad へ異動になりますから、センセイも一緒に行った方がいいと思いまして…」


えーっ、まさかの展開。

我が社にAhmadabad Branchがあるのは勿論知ってるけど、Ahmadabadってどこ?

っていうか、あそこはベテランのS先生がいるじゃん。

「あのS先生は退職されるんですか?」


「ええ。MYSは新しい支店長がきます。センセイはVと一緒の方がいいでしょ。まぁ、MYSに残りたいならそれはそれでいいですけど…」


V支店長は私と同年代で日本に15年も住んでいた日本のオッサンみたいな人。

日本語は通じるので、楽だけどさ。

でも別に正直全然仕事で絡みないから、どうでもいい。それよりAhmadabadに新しい日本語教師雇えばいいんじゃね?

支店長も調子よく

「センセイも新しい土地でまた違った経験ができるので、いいんじゃないですか」


「あの、別にお断りする理由もないんですが、あまりに突然のお話でしたので、心の準備が…それは今お返事しないといけないんでしょうか?」

「来週にでもお返事いただければ…でもこの件はご内密に」


うわぁ、こんなビックリニュース誰かに話したい。ブログに超書きたい。でも最近教え子がGoogle先生を使って翻訳して読んでるらしいからダメだ。

FBもインスタも教え子は友達だし…

とりあえず実家の母と養成の先生とSNSをやってない友達にメールで報告。


まぁ、待遇悪い会社だけど、インドで他の土地に行けるチャンスもないので、副社長には早々に「行きます」と返事したから、教え子達に言いくてたまらん。

隣の空き地で「王様の耳はロバの耳」と言いたいぐらい。


この話、いつ公にしていいのかしらん?と思っていると

支店長から今日学生達とミーティングをしますと。

まずは半分が呼ばれて、支店長とSkypeの副社長とミーティング。

会議室から出てきたメンバーが動揺している。

ついに来たか!

出てきた子達が「センセイ、私達もAhmadabadです」

ええっ?なんだそれ。

よくよく聞くと、支店長Vが退職するので、この branchは閉鎖。社員はMumbai本社とAhmadabad branchに分かれることになったそうだ。

リーダーの男の子は「会社辞める」と言いだし、新人の女の子は泣いてる。


ありゃ、これまた予想外の展開。

Vの奴騙しやがったな。

副社長もなんかハギレ悪かったのはこういうことだったのか。

でも知らない子ばかりより、今まで手塩にかけて育ててきた子が一緒に異動するのは心強い。


そんなわけで、7月からAhmadabadにまいります。

Ahmadabad そこは気温が50℃に達することもあるインドでも最高記録があり、ドライステート(禁酒州)でクリスチャンやムスリムが多いMysoreと違ってヒンドゥー教徒が多く肉や魚もあまり手に入らないという噂があるところ。私にとってかなり過酷な状況で、とっても不安ですが頑張っていってきまーす。


私のBible 地球の歩き方より

若いって素晴らしい(笑)

日本語の授業を進める中で、各クラスでイジる子を見つけて例文を作ると学生たちにも親しみやすく、印象に残りやすいと思ってます。

今担当しているのは3クラス。

新卒ちゃんのクラスは人数も少なく、まだ子供なので、一人ずつプリンスとか泥棒(イケメンなのでハートを盗む)という勝手なあだ名にエピソードを付けて楽しんでる。

本人たちもノッてくれる。


N5リターンズという男子クラスは、三度不合格しているリーダー?が親分肌のいい奴なので、彼が私のことも他の学生のことも盛り立ててくれるので、助かる。


問題は入社2.3年目でN4を目指すちょっとオトナクラス。

去年はN5リターンズの落ちこぼれてやさぐれてた男子クラスを「おまえら本当に、日本へ行きたいか」と這い上がらせ、彼等は良い子に更生?し、12月のJLPTで見事にN5合格(私の実績✌️)そのまま持ち上がりでwin-winと思ってたら、

なんと去年担当した魔のN4クラスから二人が入ってきた。

魔のN4クラス それは始業時間に誰も来ない。宿題も誰もやってこない。授業中おしゃべりばかりで聞かない…という学級崩壊状態のクラス。

あまりに酷いので、本社の主任や副社長にもお目付役でSkypeで授業に参加してもらってたぐらい。

まぁ、辛かった。

そのクラスも転職やら転勤やらでクラス替えとなり、全員私の受け持ちから外れてホッとしていた矢先…二人がN4

不合格のため合流することに。

ドラゴン桜クラスはN4ビギナーなので、二人は他の支社のN4リターンクラスに合流した方がいいのでは?と抵抗いや提案してみたものの、主任からアッサリ「同じN4ですから」と言われ、敢え無く受任。


この二人(PくんとSちゃん)がやはり問題だった。

相変わらず授業中ずっと二人で話している。

どうもPくんはSちゃんのことが好きらしく、みんなが机に向かっているのに一人だけ椅子を完全にSちゃんの方へ向けて座り、話しかけている。

Sちゃんは悪い子ではないけど、Pがちょっかいを出すと相手をしてしまう。

Pのちょっかいというのが、靴を隠したり、消しゴムを遠くへ投げたり…これって小学生の男の子が好きな女の子にするヤツじゃん。

さすがに目に余るので、本社の役員向けに「あの二人がいると、他の学生の迷惑になる」と直訴メールを送ってみた。

すると二人は本社の主任から呼び出され、長々とお説教。

負けず嫌いのSちゃんは余程悔しかったのか、「センセイ、私はもう誰とも話しません」とPから離れて座るように。


Pはしばらく面白くなさそうにしていたが、日本行き選抜メンバーに決まりそうになり

「センセイ、私はマジメに日本語勉強します」と。おまえ、今からじゃ遅いよ。


でもやはりPくんはSちゃんのことが好きなので、Sちゃんが発言する度に

「それは違います」「あなたはダメです」と茶々を入れる。

そんなことが続いたので、

「前から思っていましたが、PくんはSさんが好きですね」と言ってみた。Pは真っ赤になってそっぽを向いたから、他のボーイズが盛り上がった。Sちゃんは「ごまります。→何故か濁音になるクセがある」

私も面白くなって、教科書に結婚とか彼氏彼女ネタの文や、導入の例えに二人のことを使って楽しみ、さらにそれを「今日のPとSの様子」といって他のクラスにも報告。

Sちゃんは最初のうちは「センセイ、他のクラスに私の話しないでください」と抗議してきたが、最近満更でもない様子。


昨日は「家族のために家を建てる」という例文をPに読ませて、Sちゃんに「Pが家を建ててくれますよ」とからかった。

そして今日、Sちゃんが朝から体調が優れないという。

すかさず「Pくん 病院へ連れて行ってください」と言うと

「えっ、あっ…いや」としどろもどろ。でも

「Sさん、薬を飲みましたか?」と気遣っている。

ふふふ、面白い。

しかも気付いたら、Pの奴Sちゃんの隣に座ってるし…コイツわかりやすい(笑)

今日はたまたま教材に梅干しが出てきた。

するとSちゃんが

「センセイ、それはどんな味?」

「酸っぱい…sourですね」と答えたら

なんとSちゃんが

「センセイ、私それを食べたいです」


ん?!

若い女の子→体調悪い→酸っぱいものが食べたい→赤ちゃん!!

私もよせばいいのに

「日本では、酸っぱいものが食べたいのはお腹に赤ちゃんがいるときです。もしかして…」とPを見ると教科書に顔を埋め隠れてる。Sちゃんもキョトン。

他のボーイズは「おめでとうございます」

Skypeで参加してる本社の男の子達も

「そうですか!」


昼休みの後、他のクラスで今日の一件を報告。

するとSちゃんとランチを一緒に食べた女の子が「お昼ごはんを食べているとき、Sさんから聞きました。それからPさんからも聞きました」と。

なんだ、二人とも自分達で広めてるんじゃん。


夕方、支店長が外出していたので、

「おめでとうございます」「いつ生まれますか?」

既に全員周知の事実となっており、社内は大盛り上がり。

Pは椅子を低くしPCに隠れるように仕事をし、Sちゃんは真っ赤になって「いいえ、ちがいます」と否定して可愛い。


ホントは敬虔なヒンドゥーだから、恋愛結婚も少数派だし、結婚前に妊娠なんてあり得ないけど…


20代半ばの若者ばかりのこの支社。こんなロマンスがあってもいいよね。


頭痛のタネだった二人。当分このネタ使って、楽しませてもらうぜっ。

さて、明日はどんな例文にしようか…



ミランダカーさんって言うと「毎日かーさん」みたい(笑)

車じゃないんだから…

帰宅後、レトルトのほうれん草のカレーとチャパティでインド式ディナーを食べていたら→手づかみ!

チャイムが!

こんな時間になんだよ💢と思いつつ、ドアの覗き穴を覗くと一見ポリス風の男の人と作業員風のお兄さん。

???と思い、開けると

「点検だ!」と。

何事?と思う間も無く、二人で入ってきた。



なんでも玄関に置いてあるバッテリーは2ヶ月に1回点検することになってるんだとか…

越してきて4ヶ月になるけど、1回も来なかったじゃん。

すると「アンタはいつならいるんだね?」とポリス風の男に威圧的な態度で聞かれた。

「平日の6時半以降なら」と答えると

「他は?」→何様だ、こいつ

「土日ならいる」

「土日なら何時でもいるんだな?」

なんで、こんなに偉そうなんだよ。


このやり取りの間に一緒に来てた作業員がテキパキとバッテリーの中の水をチェック。


尋問?とほぼ同時に作業も終わった。グッドコンビネーション👌

作業終了のサインも

「こことここにサインして。ん?お前の名前なんて読むんだ?」

と偽ポリス→何者なんだろ。


そんなこんなで、帰っていった。


はた、と気づくと私ってば、キャミソールに短パン、しかもノーブラ。

ここはインドなんだから、こんな格好で出たらダメじゃん。→日本でもダメか。


さて、何故家にバッテリーがあるかというと、停電の多いインドで停電時の発電機用のものらしい。

しょっちゅう停電があるけど、照明やファンが動いているのはこの子のおかげ。

大事なのね。その割に4ヶ月点検に来なかったけど…